隠岐島前教育魅力化プロジェクト
概要
魅力的で持続可能な学校と地域をつくる
平成20年度(2008年度)、島前地域唯一である隠岐島前高校は生徒数の減少により廃校の危機を迎えていました。人口減少や少子高齢化の影響で過疎化が進む一方で、島前地域3町村が協議し活路を見いだしたのが、生徒・児童が「行きたい(通いたい)」、保護者が「行かせたい(通わせたい)」、教職員が「行きたい(赴任したい)」、地域住民が「活かしたい」と思う魅力ある学校づくり・教育の場づくりでした。その結果、生まれたのが「隠岐島前教育魅力化プロジェクト」です。 高校の魅力化では、島前3町村と島前高校、島根県が連携し、全国から生徒が集まる特色ある学校づくりを行っています。高校と地域の連携型公立塾「隠岐國学習センター」の開設、全国から生徒が入学する「島留学」制度の導入、授業カリキュラムの魅力化などの取り組みにより、異例の学級増となりました。 高校からスタートしたプロジェクトですが、近年では地域の小中学校に範囲を広げ、地域、学校、行政とともに「魅力的で持続可能な学校と地域をつくる」ことに取り組んでいます。
隠岐島前高校魅力化の取り組み
学校・行政・地域住民が協働し、日本各地から意志ある入学者を募る「島留学」制度や、島前研修交流センター「三燈」の設置、地域住民が島留学生の支援をする「島親」制度など様々な取り組みを行っています。
隠岐島前高校・島留学制度
隠岐島前高校では「島留学」として、日本全国から生徒を募集しています。これまで、北は北海道から南は鹿児島まで全国各地から生徒を受け入れてきました。中学時代を海外で過ごして高校から本校へ進学する生徒や、中高一貫校から進学する生徒もいます。
島前研修交流センター「三燈(さんとう)」
「島留学」の本格化に伴い、学校寮の増設が急務となり、2015年3月に島前研修交流センター「三燈」が完成しました。学校寮だけでなく、地域に開かれた研修・交流の場として設置され、学校・寮・公営塾(隠岐國学習センター)の3カ所を活用した全人的な教育の推進の一翼を担う役割を担っています。
島親制度
島留学生には地域と関わるきっかけとして「島親さん」を一人ひとりにつけています。 休日に家を訪ねて畑の手伝いをさせてもらったり、一緒に料理をしたり、普段はなかなかできない船上の海釣りを体験させてもらったり。学校だけでは経験できない、地域ならではの貴重な経験をさせていただいています。卒業後も交流を続け、島親さんを訪ねて来島する生徒も多数います。
つながる+まなびや 隠岐國学習センター
隠岐國学習センターは、隠岐島前高校と連携し生徒それぞれの自己実現を支援する公立の塾です。定期テストや進学に向けた教科学習のサポートだけでなく、主体的に自ら学んでいく力を育む「自律学習支援」、地域を舞台に多様な人々とともに学び、実践する「夢ゼミ」、生徒主体のプロジェクトなど、生徒の「〜したい」を応援し、伴走しています。
夢ゼミ
生徒自身が興味関心を持ったことを、島前地域を舞台に対話、実践、探究し続けることで、自分の興味や夢を明確にしていくカリキュラムです。高校の授業のなかで取り組む「夢探究」に加え、隠岐國学習センターで行っているのが「夢ゼミ」です。
小中学生を対象とした取り組み
近年では、島前地域の小中学生を対象とした取り組みもはじまっています。中学生を対象とした「オンライン夢ゼミ」の実施、都会への越境機会を創る「アーバン探究」など、島前3町村の小中学生に日常的な学びの場を提供し、多様な価値観と出会える体験を創出しています。
地域と共に学校をつくる 小中教育魅力化
隠岐島前地域では高校魅力化プロジェクトを進めていくなかで、小中学校でも教育魅力化の機運が高まり、海士町では2015年から小中学校にコーディネーターを配置。「地域と共に学校をつくる」をテーマに活動しています。 小中学校魅力化コーディネーターは、島前地域の各小中学校で生活科や総合的な学習の時間、ふるさと教育やキャリア学習を中心に地域資源(ヒト、モノ、コト)の活用とコーディネートを担当しています。 また島前の子どもたちの学びや選択肢の充実や発展のため、3町村における知見や資源の共有を促す活動もおこなっています。子ども、保護者、教員、地域の人々が「通いたい」「通わせたい」「働きたい」「関わりたい」と思える学校づくりを、町村の教育委員会や各小中学校と連携し進めています。