11月22日(土)、東京都新宿区の日本青年館大ホールにおいて「第63回全国民俗芸能大会」が行われ、海士町などで活躍する隠岐島前神楽保存会の皆さんが、隠岐島前神楽(島根県指定無形民俗文化財)の公演を行いました。
(↑)夜の部で演じられた「先祓能」の様子。
■先祓能…儀式三番の能の第1番。
隠岐島前神楽保存会を構成するのは、菱浦神楽同好会(海士町)、西ノ島神楽同好会(西ノ島町)、知夫神楽同好会(知夫村)の3団体です。各団体は定期的に練習し地元で発表会を行うほか、全国各地、時には海外での公演にも遠征しています。今回のイベントでは計13名が参加し、昼の部と夜の部を合わせて14の演目を披露しました。
隠岐島前神楽は畳2畳ほどのスペースで舞うのが特徴で、狭い場所でもいかに大きく、ダイナミックに感じさせる動作を見せられるか、その演技力が問われます。また今回の公演で特に注目されたのは、4年がかりで今年ようやく復活させたという『注連行事(しめぎょうじ)』です。注連行事は本来、巫女が神名帳を読みあげて神勧請(かみかんじょう)を行い、最後に神懸かりとなって神託を述べますが、現代では形式のみとなっています。
《昼の部より》
■神途舞 (かんどまい。神を迎える場としてこの場所を設定する舞い)
■随神能 (ずいじんのう。儀式三番の能の第3番。別名「八幡」)
■注連行事 (しめぎょうじ。幣頭役が言葉を唱えながら引綱で天蓋を上下させ、その後で巫女が神勧請を行う)
■御扉開き (みとびらき。巫女の二人舞い)
■月ノ輪かざし (天蓋を大きく回して座を祓い清める仕草)
■神戻し (かんもどし。奏楽のみ)
なお、この全国民俗芸能大会は全国各地の民俗芸能を広く知ってもらうことを目的に毎年行われているもので、63回目となる今年は『神楽大会』として、隠岐島前神楽以外にも全国から3つの神楽社中が登場しました。
■鶴岡八幡宮御神楽
■金山の稲沢番楽
■駒ヶ嶽神社の太々神楽
(↑)公演の合間に行われた記念式典の様子。発表団体を代表して、隠岐島前神楽保存会の石塚代表が挨拶しました。
夜の部は、主に研究者などに向けた研究公演となり、民俗芸能学会代表理事の山路興造さんと隠岐島前神楽保存会の石塚芳秀代表による解説と共に進行されました。
《夜の部より》
■入申 (いれむし、或いはいりもうし。男一人による神勧請。奏楽のみ)
■剣舞 (けんまい。祓い清めの舞い)
■巫女舞 (みこまい。女性が重要な役割をもつのは隠岐島前神楽の特徴)
■幣帛舞 (ぬさまい。別名「散供(さんく)」。祓い清めの舞い)
■先祓能 (さきはらいのう。儀式三番の能の第1番。島前神楽においては一番最初に現れる神であることから別名「一番だて」。天孫降臨の神話、猿田彦大神が天孫瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)を迎えるというストーリー)
■恵比須舞 (えびすまい。式外の能であり、豊漁祈願の意味をもつ)
■茣蓙舞 (ござまい。茣蓙を開いたり畳んだりする、祓い清めの舞い)
この日、隠岐島前神楽保存会の皆さんは午前中のリハーサルを含めると計4時間以上のステージとなりました。他の地域の神楽とは大きく異なる、独特の隠岐島前神楽の魅力を、東京の大舞台で存分にアピールできたようです。
演者の皆さん、スタッフの皆さんお疲れ様でした。
会場へお越しいただきました観客の皆さま、誠にありがとうございました。